しばらく中途の採用担当なんかをやっていますと、なかなか面白いというか変わった現場の方に遭遇したりするケースがあったりします。
今回は、そういった方々のケースをご紹介しながら、中途採用の担当者として現場(求人部署)の面接官とどういった関係を築いていくのかについてご紹介したいと思います。
ケース1:全く話をせず外見だけで判断
あまりたくさんあるケースではないのですが、時々あるので人事としては結構困ってしまいます。
ただこのパターン、ちょっと理にかなっているというかなるほどというケースがあるので、そちらを紹介します。
目線、姿勢、身だしなみをチェックする
こういうケースの面接官というのは、応募者の一挙手一投足を見ています。
面接は日常とは全く違う環境ですので、応募者は緊張していつもとは違う態度を取ります。
ただそれは普段とは違うので、どこかでボロが出てしまいます。面接官は質問せずに、外見を見て応募者の立ち居振る舞いを見るわけです。
このパターンを取る面接官は人事にとっては結構責任が大きいというか、人事の腕を試されているような気がします。人事のお手並み拝見とでも言うのでしょうか。
人事の仕事は相手と会話をし、素の状態を引き出すということ
ここで人事の役割は、1時間という限られた時間の中で、いかに応募者の本音を引き出すのか、うまく質問をして本人の素の状態を出してもらうようにするということです。
これ、けっこう大変です。僕も10年近くこの仕事をしていますが、正直100%成功できるとは言えません。80%後半位かもしれませんね、成功率。
でも失敗した場合でも面接官のために最低限の情報を仕入れなければいけないので、本当にどうしようもかく失敗したということはありません。ここはプロですから。
ケース2:質問なしで部署の事情をコンコンと説明
これもあまりケースとしてはすくかいかもしれませんが、たまにあります。
こういうケースは、増員というよりも補充で採用しなければいけない部署に多いように思います。
話しだしたら止まらない人が多い
あまり面接に慣れていない方がこういったパターンが多いかもしれません。
質問するということが得意ではないという方です。つい、自分ばかり話をしてしまって質問をしそこねてしまうというパターンです。
本当は質問したいのに、ずっと自分で話をしてしまって、質問に至れない。そうこうしているうちに質問をしそこねてしまって、なんか尻切れトンボで終了というケースです。
履歴書から推測できる質問と、話の流れから聞く質問で押さえる
このパターンで気をつけないといけないことは、面接官が質問できないまま終わってしまうということです。
つまり履歴書の情報だけで採用不採用の判断をしかねないということです。これはちょっとというか、かなり問題です。
なので、人事としては絶対に、面接終了前に人事として質問を複数しなければいけません。ただここで注意しないといけないのが、出しゃばらないことです。
面接官は、本当は質問したいのにできなかったという思いが少しではありますがあるわけです。
その思いをないがしろにしないためにも、人事からたくさん応募者に質問して、面接官が質問したらなかった、という雰囲気を作ってはいけません。
なので、質問は多くとも3つに抑えます。しかもそのうちの質問には履歴書からある程度わかることも入れておくと良いです。
面接官には、「あいつ、なかなか良い質問をしたけど、やっぱりまだまだ若いな。履歴書に乗っていることも聞いてしまっているじゃないか」と思ってもらい、「仕方ないなぁ、人事」という気持ちを持ってもらいます。
そうすれば、面接官の面目も立つわけです。ただこの駆け引きけっこう大変です。面接官にも気を使いながら面接自体も成功させる。腕の見せ所です。
ケース3:スキルよりも夢が気になる方
このケース、ベンチャーの役員に多いパターンなのですが、最近製造メーカーの開発部門の役員がこのケースでびっくりしました。
やはりおとなになっても夢って大事なんだな。追い求めるのは重要なのかなと思ってしまいました。
夢とキャリアイメージ、キャリアプランを勘違いしないように
僕はできることならば、こうした夢を聞いたりすることは面接の中でやめてもらいたいと思っています。
なぜかというと、夢というのは仕事だけの話ではないからです。プライベートでも夢の話はあります。
もしかしたら、こっそりと知識と経験を身に着けて独立しようと思っているかもしれませんし、結婚して幸せな家庭を築きながら仕事はバランスを取りながら仕事をしたいという方もいるかも知れません。
なので、できるとならば夢というキーワードではなくて、キャリアイメージといった聞き方にしてもらいたいです。
キャリアイメージという聞き方をすると、仕事に関する将来のイメージということが応募者にも伝わってきますから、答えも、仕事での将来のイメージを話してくれます。間違っても将来のプライベートの話を、キャリアイメージ、キャリアプランからはしないはずです。
コンプライアンスに引っかからないようしましょう
この手の面接官で一番気にしないといけないことは、質問内容が個人的なことになっていってしまうことです。
夢の話を聞いている中で、家族の事になったり、信条的なことを聞いてしまうのはNGですが、つい聞きすぎてしまうケースというのは、この手の質問をすると多くなってしまいます。
こうした場合、面接中に面接官の質問や応募者の回答を遮ることは難しいので、後々でフォローをしておきます。特に応募者の顔色を見てからですが、明らかにいぶかしがったりした場合は、きちんとお詫びをして、そういった家族のこと、信条に関する事項が選考には影響しないことをきっちりと説明しておくようにします。
横道それますが面接官は教育できるか
今回のテーマとはちょっと違う話になりますが、面接官を教育する必要があるという話はたまに、人事の中でも話題になることです。では面接官を教育することはできるのでしょうか。
答えは、Yesだと思います。といっても座学的なことをするというわけではなく、面接の依頼をする前に、一言付け加える、メールの文面に入れておくだけでも効果はあると思います。
伝えておくということは大事だと思うので、できるだけ面接官にはコミュニケートしたほうがいいと思います。
ケース4:スキルよりも俺にあう奴か気になる
50代後半で部長以上、役員クラスにある話ですが、能力よりも自分の部下として従順かどうかを見たいという人は結構多いですね。
こればっかりはどうしようもない
こういう面接官を人事がどうにかしようというのは無理だと思います。かなり難しいです。
もともと採用の経緯は自分の部下がほしいわけですから。部下とは自分のしもべであるという発想の方はその発想が絶対に取れないですからね。
根強くあるイメージというのは、なかなか取れないものですからね。
数を稼いでお眼鏡にかなってもらう
こういう面接官にあたってしまったら、仕方ないのでできるだけたくさんの応募者に会っていただきましょう。
こういうケースはスキル面や人物面で採用判断をされませんので、人事としてはどういった人をご紹介すればよいのか全くわからないケースになります。
なので、書類選考の条件をいくつか作りながら、その条件に合うのであればどんどんと面接で会っていただくということをしたほうがいいと思います。
変に、悩んで現場に提案をしないということになると、「人事は全く提案をしてこない。大丈夫か?」と言われかねません。
自分たちの立場を守るということと、こうしたちょっとしたワガママな面接官に対応するための知恵として球数を増やして対応する方法もあるということを知っておいても良いんかもしれません。
ケース5:僕よりも面接流暢で眼力ありの方
一番楽かもしれないと思われがちですが、一番厄介です。というかここでは人事としての立場というよりも、面接の先輩としてご教示いただくという姿勢の方がいいのかもしれません。
ご自身で学んで身につけたスキルの場合
これは面接のスキルを学んだというよりも、管理職として部下とのコミュニケーションのとり方を学んだ結果として、それを面接に応用させているというパターンが多いかもしれません。
こういう人は人徳者が多く、我々人事に対しても非常に丁寧に接してくれる方が多いです。(ただプロフェッショナリズムが強いので、仕事に対してはシビアです。)
コーチング、傾聴、ロジカル・シンキング、ロジカル・プレゼンテーションなど多種多様なスキルをお持ちの方が多いので、こちらも一緒に面接をすると学べることがたくさんあります。
先天的に上手、根っからの人事気質の方の場合
これは、もう羨ましいを通り越して脱帽です。
面接官の素質があるわけですから。ただこういう人は自身が面接巧者だと思っていないケースがあって、知らず知らずに面接官として必要なことをやってしまっているので、嫌味がない人が多いです。
人事に対しても、「面接って大変だね」くらいの感想しか持っていません。下手をすると面接なんて簡単、人事の人は一体何をしているんだろう、なんて思う人も少数ですがいますが、それは少数なのであまり気にしないでいいと思います。
人事は、サポートに徹する
こういった方との面接でのやり取りは、サポートに徹することが一番大事です。
記録者として面接での情報をすべて書き記すということをする、面接官が聞けていないことをフォローする、事務的なこと(条件面、就労、給与などの話)を確認すると程度、などなどです。
こういうときに人事というのは事務屋だなということを痛感します。ただこの痛感は心地よいです。
人事と現場面接官との距離感
いままで、いろいろな面接官の話をしました。実はもっといろいろな面接官がいるのですが、もしこの記事が人気だったら第二弾を書こうと思います。
ただいろいろな面接官がいる中で、人事はそれに合わせて自分のスタイルを変える必要あるのですが、ぶれてはいけない軸というのもあります。
自分のスタイル確立の話と、選考プロセス全体で僕が意識していることいついて書こうと思います。
臨機応変だが、オーソドックスは作ろう
面接官に合わせて色々とスタイルを変えていきましょうという話をしましたが、そうはいっても自分の軸というかオーソドックスパターンを作るべきだと思います。
例えば僕は、最初に人事から基本的な自己紹介をしてもらい、そこから転職の理由、退職の理由などを伺います。その後は現場の面接官に質問をお願いし、その間に聞き逃していること、ミスリードをしているところを確認します。最後に人事から事務的なところ(年収、通勤時間、入社までに要する時間など)を聞き、その後に改めて現場の面接官に質問がないか確認をします。
この流れは、どんな面接官でも同じです。パターン化しています。パターンかというとマンネリ化のように聞こえますが、僕としてはルーティーンと考えて、これをすれば大抵の面接はうまくいくというもにしています。
ルーティーンなんていうと偉そうに聞こえますが、これをすればたいてい成功するといった成功パターンを作るというのは大事です。
募集後2,3名の面接後は捨てる時間と見ても良い
求人票を出したあとに来る応募者というのは結構採用に至らない方が多いように思います。求人票の難易度と正比例になります。
なので最初の面接は現場の方にも現場の要望にミートさせた方ではない可能性があることを事前に言っておくようにしています。
目的はどういった方が現場にあっているのか、人物面での確認をするためにとりあえず一度会っていただきたいという言い方をするようにしています。
要するに人事と現場の採りたい人のすり合わせというやつです。これは意図的にしたほうがいいと思います。
まとめ、現場面接官は自分にとって教師なのでうまく活用する
さて、今回は現場の面接官はいろいろな方がいて、いろんな面接スタイルがあるということを説明しました。
それによって、我々人事も面接官に合わせながら面接をすることで、面接の効果が上がってくるという話もしました。
ただ臨機応変に面接スタイルを変えるというだけではなく、自分の王道パターンを作っておくことも大事だということを説明しました。
僕は採用担当にとって面接というのは自身の経験を積むためにもとても大事だと思います。面接会場に入ることができるのであれば、積極的にはいっていただき、面接官の挙動、先輩人事に差配を見ておくことをおすすめします。良い意味でも悪い意味でも勉強になりますからね。
この企画また好評であれば、面接官のお話をしたいと思いますので、ぜひ興味があればコメントください。お待ちしています。
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