10年以上人材開発という分野で仕事をしていると、時代によって社員のパーソナリティーや雰囲気はどんどん変わってくるなと痛感をしています。
特に、新入社員研修というのはすごいスピードでキャラクターが変わってきています。研修担当者はこの変化についていかないといけませんので、大変です。
今回は新入社員を扱う身として、一時期話題になりました「日本電産永守会長の発言」から考える新入社員研修の内容について書こうと思います。
イントロ:日本電産永守代表の発言とは

2020年にカンブリア宮殿という番組の中で、日本電産が取り上げらました。その中で会長の永守重信氏が新入社員や大学教育に対してクレームともよべなくない発言をされたのがきっかけです。
どういった内容かといいますと、「経営学部を出ても経営のことを全く知らず、税金のことも何も分からない新卒学生が多いと苦言を呈し、「名刺の出し方も知らないという人が毎年何百人も出てくる」という発言」をされました。
この発言は、SNS上で炎上し、日本電産という会社が大学や就職活動生に対してネガティブなイメージが出来上がりました。
当時社内はどうだったのか
当時、縁があって日本電産とは関わりがありましたので、このときの日本電産の社内の事情はある程度理解をしていますが、この炎上騒ぎがあったところで、特に日本電産には特に波風が立ったり、新卒採用に多大な影響が出たというわけではありませんでした。
炎上をしていたのは、一部のアンチであり、それがさも大多数の意見のように取り上げられていたことに少々びっくりしたことを覚えています。SNSの炎上、クレームというのがどれほどのものなのかということを痛感した次第です。
炎上なんか気にするな、というわけではありません
こんな体験をしてしまうと、ネットの意見というのはあまり参考にならないな、気にすることではないなという思いが湧き上がってきますが、少数の意見がさも大多数の意見として捉えられがちな昨今ですので、気をつけないことに越したことはありません。
ただ、今回私が言いたかったのは、そういうことではなく、どちらかというと、永守会長の発言を受けて、アンチ側の発言に対して「ちょっと違うんじゃない?」というのが僕の意見です。
ちょっとその辺について深く掘り下げていきましょう。
アンチの意見とは

永守会長の発言を受けて、アンチ側はこんな事をSNS上で言っているようです。
- 大学は専門教育の場でビジネスマナーを教える場ではない
- 採用をした企業側が責任をもって一人前に育成するのが筋だろ
- 自分たちは何もしないで学生側に多くを求める日本電産はブラック企業だ!
僕個人としては、「まぁなんと自分勝手なことを言ってるんだろう。」大学、企業、両方の事情も知らないで、というのが正直なところです。一般論を振りかざして自分たちの言いたいことだけを言ってる非常に野蛮な意見と言わざるをえないです。
では、何が一般論で野蛮なのか
野蛮というちょっときつい言い方をしていますが、野蛮という言葉を使ったのは、事実を掴まずにその辺にある情報をつまんでいる(イメージとしては情報の拾い食いとでもいましょうか)ところが野蛮だなぁと思うわけです。
一般論を振りかざしているというのは、大学はこういったもの、企業は新入社員教育に力を入れていないもの、といった一般論(よくある話)を持ち出してそれがさも大多数で正論であると言わんばかりに発言するという点です。
最近は、いろんな情報が拡散されているので、「にわか知識人」というか「にわか評論家」がたくさんいます。あまりいい状況ではありませんが、それが現在なので仕方ないですね。
反論「採用をした企業側が責任をもって一人前に育成するのが筋だろ」

ちょっとだけですが、一点一点巷の一般論振りかざし野蛮意見に反論をしたいと思います。
自工程完結
製造でも前工程の責任は次工程が持つとは思いません。前工程は次工程が不便であったり問題が起きないように責任を持って、自分たちの製品を作り次工程に送り出します。
決して、自分たちの責任ではなく次工程の責任であるなんて思っている人はいません。こういったことを自工程完結の考え方といいます。
私が製造業に長くいるので、どうしても製造業で例えてしまいますが、他の業界でも決して後の工程が責任を持つなんていう発想で仕事をしていません。結果として後の工程の人が矢面に立つことが多いのは仕方ないですが、それと後の工程の人が責任を持つというのとは同じ意味ではありません。
一人前は一日にしてならず
一人前の定義って難しいですが、企業が研修したからといって一人前にすぐになるわけではありません。時間をかけて育てないといけないこともあります。
学校と企業が一緒になってやらないと社会人として一人前にはならないのではないでしょうか。なぜ企業側だけがその責任を負わないといけないのか、全くもって理解できません。
反論「自分たちは何もしないで学生側に多くを求める日本電産はブラック企業だ!

自分の意に沿わないと何でもブラック企業ですか。ブラック企業なんて言う言葉はもっとブラックなところにこそ使えば、言葉が引き立つのに、こんなことろで使うなんて言葉の価値を知らない人たちです。
企業は教育ちゃんとやってます
日本電産だけではありませんが、新入社員教育には各社結構な時間とお金をかけています。現に、新入社員教育をサービスとする企業がわんさかあるわけです。そういった点からも新入社員教育にはお金が回っていると考えたほうがいいでしょう。
ちなみに日本電産ですが、私が関係していた時代は、3日間の集合研修で社会人の基礎としてマナー(名刺、挨拶、礼、ほうれんそう)といったことをみっちりと教えていました。
また他の企業でも新入社員には1~3ヶ月程度の時間をかけて、教育を行っておられて、マナーついても全くノータッチではありません。
企業は次工程として大学側から受け継いだ大学生(新入社員)に必要な教育は行っていますよ。
何をもって企業は新入社員教育をしていないと定義しているのか
こういったことを仰る方々というのは何を持って、企業は新入社員教育をしていないと定義しているのでしょうか。
ご自身の新入社員の頃を思い出しているのでしょうか。または5chなどの掲示板の情報や、ネットの口コミなどを見ているのでしょうか。
確かに、入社後即現場という企業も少なくはないです。でも、その企業だって現場で研修を受けます。ちなみに試用期間というのは研修期間ですからね。3ヶ月間の試用期間は研修期間ですから、その意味を十分理解して新入社員は試用期間業務に励んだほうがいいですよ。
反論「大学は専門教育の場でビジネスマナーを教える場ではない」

この意見については半分賛成、半分反対です。
進路センター、就職課は頑張っていますよ。
大学としては自身の存在価値について常に自問自答をされています。
社会人を創出する機関として大学を位置づけている大学は多いと思います。
就職課、進路センターはあの手この手で大学生に対して働く上で必要なスキルを学ばせるための機会を作り、提案をしています。
ただし、それを受けるか受けないかは大学生の自主性です。当たり前です、大学は自治ですから。
問題は、学生と教授になると私は思っています。
教授はなぜマナーを教えない、教えないと共同研究できないだろうが
大学は専門教育の場です。おっしゃるとおりです。では専門教育とは一体どういったものでしょうか。
私は、専門教育は大学がクローズで学ぶところではなく、産官学が連携して学ぶところだと思っています。
理系は共同研究と言うかたちを取りますね。文系でも経営学部はマーケティング、経営コンサルティング、人的資源管理などは企業と共同で研究をするべきです。
産官学で研究を行う際は社会人の方と密なコミュニケーションを取る必要があり、マナーというのがとても重要になるはずなんです。
大学がビジネスマナーを学ぶ場ではないということは、大学は産官学での共同研究をする場所ではないということを言っているようなものです。なんと恥ずかしいことでしょう。
大学の先生は「私は大学でクローズした研究しかしません。産官とは交流しません。」と言っているですよね。
この意見をもし大学の教授・准教授がしているのであればなんと情けないことかと思います。
もし大学がこの役割を放棄するならば大学はもっと頑張りましょう

ということで、今回は日本電産の永守代表の2020年の発言からSNSで炎上をしているということをうけて、実際にどんな意見がSNSで炎上をしているのかを見ながら、それに対する反論をしてみました。
炎上したSNSのコメントは、一部の方の偏った意見の可能性もありますので、大学の総意ではないと思うのですが、火のないところに煙は立たないということもありますので、念のために意見を述べております。
企業で人材育成をしている身としては、新入社員に対してはかなりの工数をかけて育成をしていますし、新入社員の現状に対して大学側に対する不満もありません。前工程からくるものは自工程としての責任というのは常に意識をしてるからかもしれませんね。
ただ、もし大学側が専門教育を行う場所なので、そのための素地としてのビジネスマナーは教えないというスタンスであるのであれば、それはやはり大問題だなぁと思いますし、日本の大学から来る人材というのはいろいろな課題を抱えた人材なのかもしれないと思ってしまいます。
日本の大学がより良い経営を行っていただくことを切に願うのみです。
コメント